「機能性低血糖症」に気づいた日③

とにかく、激しい練習と寝不足でギリギリの生活を送る日々が続いていました。

中学3年の秋に始まったモヤモヤ感はなくならず、せっかく頑張って入ったはずなのに、高校生活は何をしていても「楽しい」と思えないのです。

 

それは野球でも同じでした。確かに、硬式ボールをバットの真っ芯で捉えた時に打球が飛んでいく快感は、軟式とは比べ物にならないですし、また強肩を買われて投手にコンバートされた時も嬉しかったのですが、常にふわふわした浮遊感と掴みどころのなさが続き、なぜか楽しめていない自分がいることに気づくのでした。

 

おそらく周りもその様子に気づいていたのでしょう。上級生から「集中しろ」とよく注意されるようになりました。しかし、自分ではそれなりに精一杯やっている感覚があり、これ以上どこをどうすればいいのかが全くわからないのです。元来できるだけ力を抜いて、効率よく体を使うようにやっていたのですが、手を抜いているように見えるらしく、とにかく全力でボールを投げる、打つようになりました。

 

また、身長170センチ弱、体重60キロ弱と痩せ型でしたが、「ともかく食べて体重を増やさないとうまくならない」と言われるままに、通常の弁当箱は白米だけでおかずは他の箱に入れてもらい、遅い晩飯にもかかわらずどんぶりで2〜3杯を食べるようにしました。それでも一向に太る気配はありません。

2年になり後輩が入ってくると、グラウンド整備等の負担はなくなりましたが、一度身についた習慣はなかなか抜けないのか、授業では相変わらずほとんど寝ていました。

 

そしてこの頃、肩や腰が悲鳴をあげ始め、痛みでボールを全く投げられなくなりました。チームメイトが練習している中、一人だけバスでリハビリ(鍼灸院)に通うことが半年続きました。痛みはなくなりましたが、体はそれを覚えているらしく、投げ方がわからない、いわゆるイップスになっていました。

イップスは3年になっても治らず、結局ベンチに入ることもできずに最後の夏を終えることになりました。